定食
「昔って、無限の想像力がありましたよね」
イルカが遠い目をして言った。
「今でも大概だと思いますけど」
カカシは眉をひそめて、そう返す。
「褒めていただいたのに申し訳ないんですが、俺の想像力は枯渇寸前と言わざるを得ない」
「聞きたくないけど、なにかありました?」
「仕方ありません、お話しましょう」
「じゃあ結構です」
「あれは昨日のことです」
「会話の一方通行とはこのことか」
「満月の夜に開催されるアフロ祭に参加していたんですが」
「毎度毎度、どこでそんな変なもんを発見してくるんですか」
「次は一緒に行きます?」
「その手の会話で俺が『はい』なんて言ったためしはねぇでしょ。そろそろ学習してもよろしいかと」
「100回断られても、101回目に勧誘が成功するかもしれないじゃないですか」
「勧誘言うな」
「手乗りアフロ像を購入する権利が得られるんですよ!?」
「どの層をターゲットにしたアイテムなの!?」
「たぶん、俺と同じ熱きコンプリ魂を持った層じゃないですかね」
「ガシャポンじゃねぇか」
「そっちの方が楽しいかと思いまして」
「明らかに運営サイドの発言しちゃってますよ」
「あっ、今回は教祖じゃないんで」
「発言が丸ごとおかしい」
「ガシャポン景品を作る裏方を頼まれたんです」
「交遊関係に興味を持ったら負けだと思いました」
「紹介して欲しいなら仰っていただければ……って、カカシ先生もよくご存知の方でした」
「知らない間にとんでもねぇ知り合いいたよ!」
「あの崇高な方の裏の顔にビックリってやつですね」
「やめて、そこは掘り下げないで。知らない幸せを壊さないで」
イルカは咳払いを一つ、話を戻す。
「で、ですね。俺はガシャポン景品を、彩りよくして満足していたわけですよ」
「シークレットは?」
「煮しめ色」
「もう何も言うまい」
「参加者はアフロ着用を義務付けられているんですが……俺は甘かった!」
「色だけに固執して、形に目をやってなかった、とかそんなところですかねぇ」
イルカの目が驚愕に見開かれる。
「あの白鳥を模したアフロはあなただったんですか!?」
「違ぇよ」
「じゃあ、光をあてると美しき弥勒菩薩の影ができる方!?」
「無駄に凄いな」
「しかも地毛らしい」
「取り返しのつかないアホがいた!」
「俺はあの方々のセンスに嫉妬してしまったんです。俺では敵わない、そう気付いてしまったんですよ!」
「あっ、今日はホッケが安かったんですよね」
「ホッケを模したアフロで満足できるでしょうか」
「アフロから離れる素振りすら見せぬとは」
「ワンランク上げて、ホッケ定食にしてみるか……?」
「それ、もはやアフロとは別物じゃない?」
「えっ、夕飯の話ですよ?」
「なんだろう、この裏切られた感……」
味噌がないのでクラムチャウダーを作ったら、定食とはかけ離れたらしいが、それはまた別のお話。
2014.4.18
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