ジェット

「カカシ先生、オジかわブームがきましたね」

イルカは真顔でそんなことを言った。

「それオッサン可愛いじゃなくてファッションの話ですよ」

イルカは目を見開き、そして脱力する。

「間違ってたことより、カカシ先生が今時の若者言葉を知っていたことが、なぜだかわかりませんが非常にショックでした」

「オッサン可愛いとかねぇだろ。釣りだろ」

「釣り針がデカすぎる! というか、可愛いと思わないのは性差のせいでしょう。身長が小さめのぽっちゃりしたおばさまがちょこちょこ動いてたら、俺は可愛いと思います」

カカシは虚空を見つめ、やがて眉間にシワを寄せた。

「それは……ちょっと分かる気がする」

「年上のおばさまに対して『可愛い』とか、失礼ですよ」

「なんでいきなり一般論語り始めてんだよ。言い出したのあんただよ」

「俺は、そのとき思い付いたことをそのまま口にする派です」

「聞いてねぇよ。知ってるよ。脳みそ経由させろよ」

「言葉を選んで会話している人って、スピード感がなくていけませんよね」

「言葉を選ばない人間はスピード感しかありませんけどね」

「言葉の絶叫マシーンに俺はなりたい」

「多分ジェットコースターを指してるんでしょうけど、なぜか思い浮かぶのは振り回される回転系」

「まるで俺が堂々巡りしてるみたいじゃないですか」

「正しい認識ですね」

「ジェットエンジン使ってるわけでもないのに、ジェットコースターって変な名称じゃない!?」

「会話はドッジボールじゃねぇよ!」

「キャッチする点では同じかと」

「ドッジボールでキャッチされちゃあダメでしょ」

「ジェット機のジェットとみたー!」

「ドッジボール前提で話を進めるんじゃねえ!」

イルカが真顔になる。

「スピード感がイマイチ」

「イマイチなのに会話内容が既にワケわかんない」

「会話成立してましたよ?」

「成立の意味をもう一度よく考えてみましょうか」

「考えるだけでいいなら」

「いいわけあるか」

「ダメなの!?」

「なんで驚いてるの!?」

「会話に起伏を持たせようと思いまして」

「もっと別方向で気を遣え」

「任せてください! カカシ先生、お風呂と就寝どっちにしますか?」

「ご飯食べさせてよ!」

「勝手に選択肢を増やさないでください」

カカシが財布を手に取り、玄関目指して走り始める。

しかし回り込まれてしまった。

「蟹を食べると真人間になれそうな気がします!」

「ならねぇよ!」

夕飯は何故かブリカマになったそうな。

相変わらず二人の会話はよくわからない終着を迎えるというお話。


2014.1.30

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