ヨダレ
雑誌を読んでいたイルカが、バッと顔を上げる。 「下を向くと、ヨダレが出そうになりません?」 「まだなりませんよ」 カカシの回答にイルカが眉を寄せる。 「年を取って口元が緩んでしまったのを認めるのが、そんなに嫌ですか」 「なんで俺の口元が緩んでるのを前提で話が進んでるの!? というか、年取ると口元が本当に緩むのか!?」 「……明日、紅先生に訊いてきてください」 「人選に悪意を感じる」 「あんなに優しく美しい方に対して、失礼極まりない逆さ箒ですね」 「俺の扱いが雑すぎてビックリですよ」 「飛び出せ目玉!」 「目玉は飛び出す器官じゃありません」 「生物は環境にあわせて身体的に変化してきたじゃありませんか」 「環境から考えても、今は飛び出すときではありませんね」 「あなたは何も分かっちゃいない!」 イルカはちゃぶ台を叩いた。 「今こそ俺を面白おかしく笑わせるときですよ!?」 「そのタイミングを理解できなかった俺の全細胞を讃えたい」 「呪われろ」 「じわじわ嫌な気分になるからやめて」 「そもそも呪いって、なんで兄って文字が入ってるんでしょうね」 「その話、長くなります?」 「口惜しや、イケメン兄者、呪われろ」 「答えが出てよかったですね。そのままヨダレの話も解決してください」 「オッサン同士でヨダレ話なんてゾッとします」 「話す前にその答えを出しとかんか!」 「以後、善処します」 「嘘ですね」 「なぜばれた!」 「嘘かよ!」 沈黙の後に曖昧な笑みを浮かべたイルカの脳天に、カカシは静かに拳をふり下ろした。 2013.5.22 |