タラコ酒
「カカシ先生聞いてください。このあいだ気づいたんですけど」 真面目な顔でイルカは茶を一口すすり、続ける。 「卵酒の卵の代わりにタラコをぶち込んだら、見た目的にもアウトな気がしなくもない」 「本当にどうでもいいことを考えながら生きてますね。ってか魚卵は臭みが残るでしょう。病人にトドメをさすつもりですか」 「鼻が詰まってるから大丈夫ですよ。問題は舌触りではありませんか?」 「なぜ目の前の大問題を放っておいて、細かいところに目をやるのか理解できません」 「病人はデリケートですから」 「あぁ、そこは分かってたんですね。分かってるならタラコ酒なんぞ病人に出そうとせんでもらいたい」 「卵がなければ、タラコでも仕方がないじゃありませんか」 「いやいや、卵酒自体を諦めましょうよ」 「諦めれば、そこで試合終了です。戦わずして敗北するなど愚の骨頂ではありませんか」 「戦うのは病人ですよね?」 「病人は病原体と、看病する人は知的好奇心と戦わねばなりません」 「明らかに後者は敗北する気満々じゃねぇですか」 「全力で戦った上での敗北ならば、敗者も称えるべきでしょう。というわけで」 イルカはタラコ酒をカカシに手渡した。 「飲んでください」 「タラコがほんのりピンクだよ……」 「生食期間過ぎてたんで、安全面を考慮しました」 「もっと別に考慮すべきことはなかったかなー?」 「イクラの方がよかったですか」 「デケェよ粒が」 「じゃあやはりタラコで正解ですね」 「正解かどうか、あんたが飲みやがれ!」 数分後、タラコ酒の入った湯飲みは空になっていた。 風邪をひいた上忍が勝利したのか、はたまた無駄にいい動きをする中忍が勝利をおさめたのか、それは当事者のみぞ知る。 2013.4.10 |