魅力

 「やぁおかえり、カカシくん」

人のデコをつつきながら出迎えた家主の顔面目掛けて、カカシが真顔で正拳突きする。

しかしイルカは優雅に避けた。

「イルカ先生、どうしました? やっぱり脳が……」

「モテようかと思いまして」

「周期的にやってくるモテたい衝動に、まるで実力を出せばモテるような言い種……疲れているんですね。人に物を教えるのはストレス溜まりますもんね」

「そう、帰りに見た子どもに教えられたんですよ」

「あれ? 俺たちのこの会話、成立してます?」

「鬼ごっこ派六人に対し、色鬼派一人、この絶望的な状況で、色鬼派の少年は色鬼の素晴らしさを語り、色鬼をすることを勝ち得たのです!」

「他の子たち、聞くのが面倒になっただけじゃ……」

「相手を非難して自分の主張をよりよく見せようとする者が多い中、彼はそうしなかった。色鬼の魅力だけで勝負したのです!」

「で、先ほどの言動と、どう繋がるんでしょうか」

「優しく寛容っぽく、かつフランクさをアピールする練習をしてみました」

「必死すぎて辛い。あと言動が丸ごと古くさい」

「俺がイケメン気取りでカッコイイ立ち居振舞いした方が、必死すぎるでしょうが!」

「やめて! 涙が出そうだからそれ以上はやめて!」

イルカは顎に手をあてて考える。

「むしろ、面白キャラで攻めてみるか」

「今と何が違うのか」

カカシの一言にイルカがハッとする。

「すでにモテている!?」

カカシは静かに、どこまでも優しく悲しい顔で首を横に振ったのだった。


2012.11.28

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