ムカデ
「あっ、ムカデ」 部屋の隅に見つけた黒い生き物にカカシが近づく。 「カカシ先生! ムカデは頭に毒があるんで、まずそれを切ってからの方が調理しやすいです!」 「夕飯のオカズにされる前に逃げろ!」 カカシはその辺の紙に乗せ、ムカデを窓から逃がした。 「なぜ情けをかけたんですか?」 「まともな夕飯にありつくために逃がしただけですが、なにか?」 「ムカデがまともな夕飯じゃないだなんて、ムカデに謝ってください」 「見つけたのが俺でよかったな、ムカデ。感謝しろよムカデ」 「ちっ、デザートがなくなっちゃいましたよ」 「せめて丸焼けよ」 「チャレンジする心を評価いただきたかったわけですが」 「評価したら調子に乗るでしょうが」 「俺は褒められて伸びる子ですよ?」 「開花しちゃいけない才能は、むしるに限ります」 「これが嫉妬……」 「頭の中が開花しちゃいましたか」 「アイデアが涌き出てくる泉と仰りたいなら、照れずに口にすればいいのに」 「そのうち、あんたの耳から脳みそが垂れてくるんじゃないかと心配になりますよ」 イルカが耳を守りながら、ガタガタと震える。 「まさか俺の脳みそが珍味的な意味で狙われている!?」 「狙いたくないランキングで、かなりの上位ですよ」 「ふっ、そんなバレバレの嘘に騙される俺じゃありません」 「自分の脳みそに、それだけ自信のある人も珍しいですよね。耳にネギでも突っ込んどけ」 「その流行は来ないと思うんですよ」 「誰がオシャレアイテムと言ったか」 「どうせ身につけるなら、オシャレな方がいいじゃないですか。スタイリッシュネギ」 そう言うと、イルカはハッと顔を輝かせ、台所に走った。そして一時間経った頃、ふらりと現れる。 「味噌汁とサンマの塩焼です」 「……普通に夕飯作ってたのは予想外でした」 二人は「いただきます」と手を合わせ、食事を始めた。 カカシが味噌汁に入っていたデカい具材を箸でつまむ。 それは、刻まれ、削られ、ポージングしたマッチョな男へと変貌したネギであった。 「スタイリッシュでしょ!?」 目を輝かせるイルカを無視して、カカシは黙ってオッサンを咀嚼したのだった。 201210.03 |