カレー屋さん
「大好きなカレー屋の店主が旅に出てしまいまして」 イルカが神妙な顔で言った。 「はぁ、それは残念でしたね」 カカシが夕飯のカレーを食べながら返す。 「必殺技を編み出しに行くので探さないでください、という貼り紙があったんですけど、探した方がいいのか、探さない方がいいのか悩むところです」 「カレー屋の店主は、いつまでもイルカ先生の心の中で生き続けることでしょう。ところで、このカレー、いつもと味が違いますけど、店主直伝ですか?」 イルカが怪訝な表情をする。 「八百屋のおばちゃん直伝です。それに件のカレー屋のカレーだと、俺のより不味いですよ」 「大好きなカレー屋じゃなかったの!?」 「107つの必殺技を編み出したカレー屋店主は、リスペクトしてます」 「別の修行をすべきだろ、カレー屋」 「108つの必殺技を我が物にした時、世界は暗黒につつまれるそうですよ」 「完成させちゃダメだろ、それ。っつーか誰かさんと同じニオイがしてならない」 「暗黒世界の中心とか、一般人よりワンランク上のポジションを得られるのが正直悔しいので、邪魔をしに行くべきか、里で対抗する術を身につけるべきか」 放置一択――カカシは色んなものを放置して、八百屋のおばちゃん直伝のカレーを堪能したのだった。 2012.5.16 |