カオス
「子どもの会話ってカオスですよね」 イルカが真顔で言った。 「カオスなのは子どもだけじゃありませんよ」 カカシがイルカを見ながら返す。 「昨今のお偉いさんもカオスだなんて、そんな皮肉ネタは置いておいて…」 「いえ、俺が言いたいのは、もっと身近な話なんですが」 イルカは無言の後、溜め息を吐く。 「紅先生……ですか」 「ちげぇよ。なにそれ、危険人物の名前をポロリしてみるテスト?」 「紅先生、あんなこと言ってますよ」 イルカが押し入れを開ける。 「ちょっ、俺は無実だ!」 しかしそこには誰もいなかった。代わりに、カカシは押し入れの奥で不気味に笑う人形と目が合った。 「保身に走りましたね、カカシ先生」 「っつーか、気味の悪いもんを押し入れに収納するの、そろそろやめません?」 「俺が作った紅先生人形を気味悪いだなんて、謝ってください。ご本人も『まぁ可愛い、よく似てるわね。私だと思って地中深くに埋めてちょうだい』と仰ってくれた逸品なんですよ?」 「紅……俺が悪かった」 野放しにした俺のせいだというセリフは飲み込んだ。 「で、子どもの会話がカオスだという話の続きなんですけど」 「お腹一杯です」 「じゃあ紅先生人形を差し上げます」 「胸も一杯です」 「そんなに喜んでいただけるなんて!」 「いらねぇ!」 結局押し付けられたカカシが、紅人形(仮)を寝ているイルカの枕元に設置して嫌なサプライズを計画し、なぜか自分が朝イチ悲鳴をあげる羽目になるのだが、それはまた別のお話。 2012.4.10 |