雑草

カカシが疲れた様子でイルカ宅にやってきた。それを見た家主が、コタツで寛ぎながら声をかける。

「女にでもフラレたんですか?」

「違いますよ」

「じゃあ男にフラレたんですね」

「なぜそうなった。っつーか腹減ってるだけですよ」

「その辺の草でもツマミながら来ればよかったのに」

「何が悲しくて野草を食わねばならんのか」

「腹が減ったならば、草でも美味しくいただかねばならん時が忍にはあるんですよ?」

「それが今じゃないことは確かですがね」

チッチッチッとイルカが指を振る。

「こんなこともあろうかと、雑草を抜いてきました!」

ドンと置かれたビニール袋を見つめるカカシ。

「ちゃんと食べれる草を多分選別しましたから」

「優しさの方向性がおかしい上に、多分とか中途半端すぎるだろ。っつーか、なにこれ」

「今日草むしりしてまして、なにかに使えるかもと思い、嫌がらせ目的て持ち帰ってみました」

「せめて目的をオブラートに包んで……いただくと、さらに腹が立ちそうなので、もう黙っててください」

イルカはとてもいい顔でビニール袋をカカシの方へと近づける。チラチラと雑草とカカシを交互に見つつ、なにか物言いたげな口は、一応閉じられていた。

「無言がうぜぇ!」

「ウザくない俺なんて存在しません!」

「喋ってもうぜぇ!」

「じゃあ踊りましょうか?」

「どうしてそうなった!?」

「もう、俺だからこうなったとしか……」

「正しすぎて涙が出ますね」

「年食うと涙腺弛みますもんね」

「年のせいですかね……違う気がしますけど、もうそれで良いような気がしてきました」

抗う気力を失ったカカシが夕飯にありつけたのは、なぜかイルカが踊り疲れた一時間後のことであったそうな。


2012.3.28

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