ミジンコ

「過ぎ去ってしまうとバカバカしい悩みの、なんと多いことか」

イルカは過去の自分を嘲るように、カカシの作った夕飯のカレーライスを一口食べて、含み笑いをした。

「昼間にカレー食べようとして、結局やめたとかですか?」

「カカシ先生の中の俺、どんだけ悩み小さき生物なんですか。あれですか、お前の悩みなんてミジンコ並み……っつーかお前がミジンコだとでも?」

「自虐的な言葉が息を吐くように出てきますね。どこか病んでるんじゃないですかと訊ねたいところですが、おおむねいつも通り」

「失敬な、俺はミジンコじゃありません」

「言ってねぇですよ」

「それはよかった。俺は今、大変気分がいいんです。それを害してはいけません。なぜなら、俺の中の魔王が覚醒してしまうから!」

「テンション高くて、いつも以上に頭悪い発言を連発しちゃってますよ」

「ふふふ、なんとでも言ってください。悩み抜いた結果、ライスの誘惑に負けず、昼食をカレーうどんにした俺は今や勝ち組……!」

「ミジンコめ」

「ミジンコに失礼ですよ」

「ごめんなさいミジンコさん」

「ミジンコに『さん』など付けて、可愛い子気取りか、中年!」

「魔王が覚醒した!」

「……」

「……」

沈黙の後、二人はなにごともなかったかのように食事を再開した。

「カカシ先生、ノリいいですね」

「うるさい、黙って食べてください」

「いつか身を滅ぼしますよ」

もう手遅れだ……カカシはそんな言葉をカレーと一緒に飲み込んだそうな。


2012.2.24

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