お花畑

「他人事だと笑えることって、世の中にはたくさんありますよね」

言いながら、イルカがため息をつく。

「明らかに他人の不幸を笑いにかかってるのに、好感度下がりそうだからって無理矢理ため息つくの、やめてください」

「カカシ先生、花丸をあげましょう」

「不名誉な」

「でも真ん中には『惜しい!』の一言が付け加えられるんですがね」

「惜しいなら、最初から花咲かさんでください」

「咲かせた方が、なんか楽しいじゃないですか」

「咲いてたのはあんたの頭か」

「お花畑です」

「恥じろ」

「恥とはかき捨てるものですよ」

「あんたに言われると釈然としないのはなぜでしょう」

「反抗期ですね」

「この年で反抗期とか、もはや手遅れな大人としか思えないんですが」

「まんまじゃないですか」

イルカが笑う。

「殴りてぇ」

カカシは奥歯を噛み締めながら微笑み、そしてハッとした。

「……まさか、イルカ先生の相手をしてる俺の不幸を嘲笑ってた、なんて話に繋がるんじゃないでしょうね」

「あまりの暴言に、夕飯を作る気が失せました」

「元からなかっただろ」

「まぁ、そんな周知の話はさておき」

「やっぱりなかったんだ」

カカシは出前のチラシを眺め出した。

「で、第三者的にあんたは何を見て笑いたいんです?」

「突然の質問で咄嗟には思い付きませんが、カカシ先生の頭にキノコでも生えれば笑いますかね」

「今考えたことじゃねぇだろ、それ」

「前々から考えてはいましたが、大して面白くもないので没にした案を引っ張りだしてみました。たぶん『ぷっ』と笑うくらいはできるはずです」

「無理やり引き合いに出された挙げ句に、同情票みたいな笑いしか生み出さない人物にされた俺の気持ちが、あんたに分かりますかね」

「分かるわけないじゃないですかぁ」

「ですよねぇ。っつーかあんたが生やせ」

「食料生えてきたって喜ぶだけだと思いますよ」

「食うなよ」

「飢餓で失われる命があるご時世に、なに贅沢言ってるんですか!」

「別の理由で命が危ないかもしれぇですよ」

「……カカシ先生、最近体調はいかがでしょう」

「いったい飯に何ぶちこんだの!?」

それからしばらくのあいだ、夕飯の買い物と支度はカカシが担当したそうだが、それはまた別のお話。


2012.2.20

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