健康ダンス

「ボーッと突っ立ってる人を見ると、何考えてんのかなぁって想像しちゃったりしますよね」

茶をすすりながらイルカが言う。

「いいえ、まったく」

真顔で返し、カカシは茶をすすった。

「ヤツラは、いきなり腰を横に振って健康ダンス始めたら周りがビビるかな、とか考えてるかもしれないんですよ?」

「体の健康を心配するより、心を健康にすべき人ですね」

「そんなエンターテイナーに驚かされないよう、俺はいつも身構えてるわけでして」

「内勤もストレス溜まりますからねぇ」

「……いや、俺がボーッとしてるときの思考を紹介してるわけではありませんよ?」

「そんな考えに行き着く時点で、疲れているんじゃないかと思わずにはいられなかっただけです」

「失敬な。じゃあカカシ先生はそんな時、何考えてんですか?」

「夕飯なにかいな」

「なぜ面白くないことを考えているのか!」

「なにゆえ面白くしようとするのか!」

「面白いからです!」

「あぁ、それに関しては間違っちゃいない!」

「俺が真面目なツラして授業してる時の思考が真面目だと思うなよ!?」

「そこは思うわバカタレ! っつーか生徒その他諸々に心の底から謝っていただきたい」

イルカが辛そうな表情でポツリと言う。

「深層心理では謝っているんです」

「もっと表層まで浮上させてください」

「頑張っても浮かんできませんが」

「うん、そうだと思いました」

「カカシ先生は諦めるのが早いですね」

「イルカ先生が諦めさせるの上手なだけですよ」

「物を教える人間にとって、それもまた重要なスキルのひとつですから」

なぜか誇らしげなイルカを見つめながら、カカシはボーッと「今、健康ダンスとやらを始めたら、この人どんな顔するかなぁ」と、どうでもいいことを考えていたそうな。


2012.1.30

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