自宅愛

イルカがカレンダーを見つめる。

「28日ですね」

「俺たちのいる時空が歪んでなければ、28日ですよ」

カカシは湯飲みをちゃぶ台に置き、そう言えばと話を続けた。

「今年の大掃除はいつやるんですか?」

「27日に張り切ってやります」

「誰が来年の話をしろと言ったか」

「今年はやる気が失せたからに決まってるでしょう」

「決まってねぇよ」

「じゃあ俺は司令塔やります」

「掃除する気が皆無じゃねぇですか」

イルカは困った顔をする。

「俺……そう言いましたよね?」

カカシも困った顔をした。

「却下……しましたよ?」

「俺の耳は特別製なんです。名付けて、都合の悪いことは聞こえないイヤー!」

「名前をつけるなら、せめて語呂はよくしましょうよ。まんまじゃないですか」

「そこが新しい」

「メリットのない新しさですね」

イルカはため息を吐いた。

「先程から否定ばかりなさりますけど、いったい何がおっしゃりたいんですか」

「掃除しようって言ってるんですが、よもや通じてないとは思いませんでした」

「どれだけ付き合いが長かろうと、しょせん別の個体。悲しいですが通じないこともありますよ」

「キャッチボールの相手が棒立ち状態なのが問題かと」

「その人はサッカーがしたかったんですね、きっと」

「サッカーボール大の使用済み雑巾の塊を投げつけられたくなかったら、早く準備してください」

「面倒です!」

「分かりきったことを改めて口にするなどとは往生際の悪い。そんなに広くないから、すぐ終わりますよ」

「だだっ広くて優雅な中忍宅をなめないでいただきたい」

「なにその見栄っぱり。そんなに家を愛してるなら掃除しやがれ」

「……仕方がないなぁ」

「っつーか、ここあんたの家だよ。それ俺のセリフだよ」

「よかったら差し上げますが」

「よくねぇから差し上げるな。さっきまでの自宅愛はどこいった!?」

「その辺の押し入れにでも隠れてるんじゃないですかね」

「戻ってこい、自宅愛!」

カカシが押し入れを開ける。

中には大量のメスシリンダーや奇妙な置物が、みっしりとつまっていた。

「イルカ先生、ここ担当ね」

「何往復で終わるかな」

「俺の家に移動させようとするんじゃねぇですよ」

「年始にフリーマーケットでさばくとしましょう」

売れると思っているのか?

カカシはそんな言葉を飲み込み、掃除を開始した。

イルカがまとめたフリマ用アイテムの袋に、カカシが「ゴミ」と張り紙をして一悶着あったのだが、それは別のお話。


2011.12.28

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