水タバコ

「煙草の値段、昔に比べて上がりましたよね」

カカシがなんとなくそんなセリフを口にすると、イルカがニヤリと笑った。

「禁煙に成功でもしたんですか?」

カカシの問に答える代わりに、イルカは静かに押入れを開ける。

中途半端にデカい水タバコがあった。

「流行ると思うんですよ」

「流行る要素が微塵もないんですが」

「煙草は値上がりの一途をたどり、世の中には煙を吐くだけのよく分からない道具が出回っている……そう、流行らせるなら今しかない!」

「説明になってない説明を聞いても、やはり流行る気がしないのは、説明になってないからでしょうね」

「優雅な気分に浸れるんですよ?」

「喫煙者は手軽さを求めていると思われるんですが」

「任せてください」

イルカはそのセリフを待っていたとばかりに、自信たっぷりの顔で押入れの奥を指差す。

水タバコを固定し、なおかつ衝撃にも耐えうるよう改造した台車がそこにあった。

「任せてはいけない人物だったことは分かりました」

「これを押しながら歩けば、注目の的ですよ!」

「俺も振り返りますね。関わっちゃいけない奴の顔を覚えるために」

「優雅を携帯する、そんなキャッチコピーはいかがでしょう」

「優雅は携帯してるかも知れませんが、携帯してる時点で優雅とはかけ離れた絵面になってますよね」

イルカは目を閉じ、想像する。そしてうっすらと目を開けて言った。

「試合に勝って勝負に負けた?」

「試合に勝てた気でいるのが怖い。っつーか電子タバコの圧勝?」

「あんなものと一緒にしないでいただきたい。水タバコにはインパクトがあるんです!」

「裏を返せば、インパクト以外ないじゃねぇですか」

「追加効果で給料日前の財布にダメージを与えられます」

沈黙の後、カカシが腰を浮かせる。

「よし、今日は料亭にでも行くかな」

「えぇ、カカシ先生の奢りで」

「お断りだっ!」

走るカカシに、それを追うイルカ。

この後、追っ手をまいたカカシが料亭に行き、はらぺこ中忍に先回りされていたと知るのだが、それはまた別のお話。


2011.11.02

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