おじいさん

「カカシ先生、膀胱炎になったことあります?」

お茶を飲みながらイルカが真面目な顔で問う。

「いえ、ありませんけど、膀胱炎なんですか?」

「友人の知人のハトコがすれ違った人物が膀胱炎だったそうです」

「すれ違っただけで分かるとか、ハトコすげぇですね」

「御年88。今朝も『ファイヤー!』と叫びながら、玄関の水まきしてたそうです」

「それは未来のイルカ先生ですか?」

「そんな米寿に私もなりたい」

「なれますから安心していいですよ」

イルカは親指を立ててニヤリと笑う。カカシが静かに無視すると、イルカは何事もなかったかのように続けた。

「で、そのおじいさんから聞いた話なんですが」

「捏造されたじいさんかと思いきや、実在して、あまつさえ交遊があることに驚きました」

「知り合い100人できるかなプロジェクトを、一昨日から進めてまして」

「本日飽きて終了したと」

「あなたが俺のことをどう認識しているのか、よく分かりません」

「飽き性」

「だったら分かったはずです。昨日の時点で飽きたということが!」

「せめて今日まで続いてるといいな、という期待を込めたまでです」

「期待は裏切られるのが前提ですからね。悲しいことです」

「やっぱりという感の方が強いんで、悲しみはありませんでしたよ」

「それは幸いです」

「慣れって怖いですね」

「そうそう、膀胱炎ってクセになるそうなんで、カカシ先生も気を付けてください」

「痛いと聞きましたが」

「トイレに行くことが苦痛なだけで、こんなにも人生が暗くなるものだとは思わなかった、おじいさんはそう仰ってましたよ」

「明らかにじいさんが膀胱炎じゃねぇですか」

「……という電波を通行人から受信したそうです」

――やべぇ、本当に未来のイルカ先生がいる。

カカシは、じいさんの生活圏内を聞き出し、できるだけ界隈に近寄らぬようにしたそうな。

じいさんとカカシが一ヶ月後に衝撃の対面を果たすのだが、それはまた別のお話。


2011.4.18

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