カッパ

「雨、鬱陶しいですよね」

窓の外を見ながらイルカが言った。

「確かに任務の時とかは面倒ですよね。逆にそれがありがたい時もありますが」

カカシが言った途端、イルカは眉根を寄せる。

「誰も任務の話なんかしてませんよ。っつーかプライベートの時に仕事の話を引き合いに出すとか、どんだけ仕事脳なんですか。なに? 上忍になるには四六時中仕事のことを考えてなきゃいけないの? あらやだ、つまらない」

「ひがみ全開のネエサンになってますよ」

「あら失礼」

「で、つまり、どんな話の展開にしたいんですか?」

「オシャレなカッパの布教活動を少々」

「普段使いとなると、やはり傘を選択しがちですから、そのオシャレなカッパとやらの話は興味深いかも」

「リアルな質感の魚チックなカッパとかたまりませんよね!」

「同意を求めないでいただきたい」

「先程興味を示しておきながらこの仕打ち……早く『着てみたいとか思ってないんだからね! ちょっとしか』ってセリフ吐いてくださいよ」

「人を勝手にツンデレキャラにせんでください。っつーか、俺がそのキャラだとキモいだろ」

「気持ち悪くなどありませんよ。頭イタんだと思うくらいで」

「カッパの話は、発想は悪くないけどセンスが悪かったってオチですかね」

「やだこの人、無理やり話を戻そうとしてるわ」

「努力の賜物です。って、そろそろその口調やめぃ」

「まぁ冗談はさておき」

イルカが咳払いをひとつ。

「魚カッパは売れると思うんですよ」

「なんでそこも冗談にしとかなかったかなぁ」

「だって魚ですよ? ぬらりとした表面を伝う雨水を想像してみてください。う……美しい」

「地上を闊歩してて欲しくない類の生物しか想像できないんですけど」

「ではカッパ自体を諦めて、メルヘンな傘でも考案しますか」

「魚一択しか用意してなかったとか、強気すぎるだろ」

「数で勝負するのを否定する気はありませんが、愛すべき一品で勝負し、散るのもまた一興」

「散ること前提ですか。とんだマゾ行為ですが、正しい認識ができていて幸いです」

「メルヘンな傘の案としては、やはりでっかい葉っぱですね」

「いきなりマトモなことを言い出してどうしたんですか!?」

「材質は豪雨にも雪にも負けない超合金で」

「重いわ」

やっぱりマトモじゃなかったと安心しながら、カカシは夕飯の支度に取りかかったのだった。


2011.2.15

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