カレーパン

「……カカシ先生」

イルカは風呂上がりに神妙な顔で話しかけた。

「うん、とりあえず服を着ろ」

「そんなことより大切なお話があるんです」

「バカかもしれないんで風邪をひいたのに気付かない可能性もありますけど、体がダルくなるかもしれません」

「人の話を聞くって大切なことですよ?」

「ノシつけてあんたにそのセリフを返します」

「いりません。ノシなんて食べれないじゃないですか。ハムくらい用意してから出直してください」

カカシは色々諦めて、「で、なんですか?」と訊ねた。

「カレーパンが食べたいです」

「風呂上がりにカレーパンはねぇですよ」

「状況など関係なく、がむしゃらに食べたい時ってあるでしょう!? だから買ってきてください」

「人をパシらせようとしてるよ、この人!」

「本来ならば立場が上であるあなたに、こんなことを頼むのは心苦しい。ですが俺はあえて頼みます。悩み苦しんだ末のお願いなんです!」

「断る」

「却下します」

「暴君にもほどがある!」

「それに……俺には行けない理由があるんです」

イルカが少し沈んだ声を出す。

「なぜなら俺は今、服を着ていないから!」

「マッパで外に放り出されるか、服を着て自ら買いに行くか、選んでいいですよ?」

「あっカカシ先生、散歩行きましょう。夜の散歩なんて久々ですよね。きっと星が綺麗ですよ」

とても楽しそうに喋るイルカを見ながら、カカシは悩んだ末に「じゃあ、散歩行きますか」と苦笑しながら言った。

「では行ってらっしゃい」

「なんですと!?」

「俺マッパだし……それに一緒に行くとは一言も……」

「やかましいわ!」

十分後、季節を直に肌で感じさせてやろうかと本気で思ったが、被害を受けるのは周りの人だからと実行に移せず歯軋りするカカシの隣で、イルカは満面の笑みで歩きながらカレーパンを頬張っていた。

これは、星がとても綺麗な夜のお話。


2010.11.09

 

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