言葉の乱れ
「使い古された言い回しですが、最近の若者は言葉が乱れすぎですよね。今日も生徒の一人と話してたんですがさっぱりで」 食後のお茶を飲みながら、イルカはカカシにそんなことを言った。 「乱れた言葉や間違った使い方が、後世では普通の言い回しと認識されることもありますけど、それにしても乱れすぎている感は否めませんね」 「注意すべきなんでしょうけど、彼なりの言葉で頑張って何かを伝えようとしているんだと思うと、俺も少し歩み寄ってみようかと考えているんです。彼もちゃんとした場では普通に話しますし」 いつになく真面目だなとカカシは思ったが、茶化すのもなんなんで、「いいんじゃないでしょうか」と微笑んだ。 次の日、カカシがイルカ宅に行くと、満面の笑みで出迎えられた。 「んばぼぼんぼば、ぼばんぼばばば!」 「何一つよくなかった! それは言葉の乱れじゃなくて別の言語だよ。木の葉の里はどこの現地人をかくまってんだよ。あまつさえ忍に育て上げようとしてるとか、何考えてんだ。っつーか、ツッコミどころ多すぎて以下略だよ!」 「んばぼぼん」 「普通に喋ってください」 「んぼ?」 「優しい俺が優しい方法で言葉を思い出させてあげましょう」 カカシが拳を握りしめる。 「んばぼ!」 ――ガラリ。 イルカのセリフを合図に窓が開き、一人の少年が中に侵入してくる。 「んばばぼば!」 「ばぼんば!」 イルカと少年は握手し、そして目の前の敵にファイティングポーズを取る。 カカシは微笑みながら二人に向かって拳を突き出した。 息の合った連携により予想外の苦戦を強いられたカカシが、「もしかしてあの言語、すごいんじゃね?」と思ったのは秘密である。 後に二人が適当に喋っていたことが発覚するのだが、それはまた別のお話。 2010.11.06 |