トーテムポール
カカシがイルカ宅に行くと、家主がデカいトーテムポールにもたれかかっていた。 「いい薪ですね。燃やしましょう」 「人ん家の物を勝手に燃やそうとしないでください。それに、これは明日のラッキーアイテムなんですから」 「担いで出勤するつもりですか?」 「それが目下の悩みなんです」 「キーホルダーとかでいいと思うんですけど」 「トーテムポールのキーホルダーなんて持ってませんよ」 「常識的に考えて、このデカい方を持ってないのが普通なんですけどね。って、これどこにしまってたんですか?」 「別宅です」 「明らかに俺の家じゃねぇですか。最近帰ってないけど、えらいことになってそうな気がします」 「それほどじゃありませんよ?」 「やっぱり色々持ち込んでやがったか」 イルカはとても優しい顔で、ゆっくりと頷いた。 「まぁ、粗大ゴミは気が向いた時に処分するとしましょう」 「そして、空いたスペースにレベルアップしたアイテムを置けばいいんですね」 「家ごと処分するのも視野に入れます」 「俺の別宅の危機!」 「勝手に私物化せんでいただきたい」 「その話し合いは、また今度にしましょう。俺は今からトーテムポールのキーホルダーを彫らねばなりません」 「今日中にできるといいですね」 「……クオリティを重視した場合、所要日数三日じゃないですか!」 「知りませんがな」 「しかしクオリティを捨てるなどとは、芸術家にあるまじき行為」 「とうとう転職したんですね」 「仕方がない。別の本に鍋がラッキーアイテムとあったんで、そっちにします」 「かぶって出勤ですか?」 「いえ、鞄がわりにしようかと」 トーテムポールを担ぐイルカ。 鍋を抱えるイルカ。 カカシは想像し、後者の方がマシかつ機能的だと判断したので、それ以上は何も言わなかった。 イルカの運気が鍋で上がったのか、それは誰も知らない。 2010.11.01 |