かぼちゃ
「かぼちゃアタァァァァック!」 玄関を開けるなり、カカシは視界を奪われた。何かかぶせられたらしい。イルカのセリフを信じるならかぼちゃだろう。 「ハロウィン用のカボチャを作る練習でもしてんですか?」 「いつでも危険と隣り合わせの忍である俺が、そんなウカれたお祭りのために数日前から練習したりしませんよ」 「年中ウカれっぱなしの自覚はありませんか……」 「キリッ!」 「なにそれ、ウカれてないフリ? 分かりにくいったらありゃしない」 「っつーか、カカシ先生。いつまでそんなもん被ってるんですか。物凄く愚かな人みたいですよ」 「なぜだろう、アホと言われるよりも地味に傷つくんですが」 カカシは頭にかぶせられた物を取った。 緑のカボチャに極太ペンで、へのへのもへじと書かれていた。 「愚かだ!」 「あっ、夕飯はラーメンなんで」 「カボチャの中身はどこいったんです?」 「中身は首の上についてるじゃないですか」 「さっきまで入ってた中身じゃねぇですよ」 「ハロウィン仕様のパンプキンパイを試作して、美味しくいただきました」 「おもうさまウカれてるよ、この人! っつーか危険と隣り合わせの忍ってのはどこいった!?」 イルカの表情が真剣なそれに変わる。そして、重い口を開くかのように静かに言った。 「カカシ先生、変な臭いがするんで、風呂入ってきてください」 「あんたのせいだぁぁぁぁ!」 一時間後、散乱したかぼちゃの皮やら何やらを無言で掃除する二人の姿があったらしいが、それはまた別のお話。 2010.10.15 |