先生
「イルカ先生、俺たちは何ゆえ互いを先生と呼んでいるのでしょうか」 イルカは湯飲みに口をつけ、ゆっくりとちゃぶ台の上に置いた。 「あなたが俺を師のごとく尊敬しているからでしょう」 「ではイルカ先生も俺を尊敬しているんですね?」 「俺の方は嘲りです」 「なんでじゃー!」 「お気に召さなかったようですので、先程の設定はすべて白紙に戻して、神の御意志というのはいかがでしょうか」 「細かい設定にまで口出ししてくる暇な神だな、おい」 「設定の基礎をちゃんと決めておかないと、途中で粗が出ますからね」 「予想もしない方向に話が進んでいるんですが。っつーか何の話をしてんですか」 「神と言う名で呼ばれることもある俺の話じゃないんですか?」 「現実でそんな呼ばれ方されてたら、イジメられてんじゃないかと不安になりますね」 「ゴッド・イルカ、過去を知る者にそう呼ばれると、やっぱり照れちゃいます」 「真顔でそんな無茶設定を捏造されても困ります」 「無茶かどうか、やってみなければ分かりません!」 「今から活動始めるのかよ。さっき過去がどうのこうの言ってましたよね」 「まずは噂操作! カカシ先生、ゴッドの名を3日以内に30人に広めないと、不幸なことが起こるらしいですよ」 「微妙に人数多いな、おい」 「続いて……!」 拳を握り、前のめりの状態でイルカは止まった。 どれほどそうしていただろう。イルカは姿勢を正し、お茶を飲む。 「それにしてもカカシ先生、発言を無視されても動じなくなりましたね」 「飽きたのか思い付かなかったのか……」 「特別に焼酎一本で教えてさしあげますよ?」 「うん、胸に秘めておいて」 「胸に秘めておいて欲しかったら、焼酎をください」 「飲みたいだけじゃねぇか」 「カカッさぁん、俺に焼酎くださいよぉ」 「やかましい。敬意を込めて『先生』もしくは『様』をつけやがれ」 この日から数日間、明らかに嘲りを含んだ調子でイルカから「カカシ様」と呼ばれ、周囲の奇異の目に晒されることになるのだが、それはまた別のお話。 2010.08.04 |