武将
酔ったイルカが帰宅してきた。 チョンマゲのカツラに、鼻の下にはチョビヒゲを描いている。 「なんじゃ、その姿は!」 カカシは開口一番叫んだ。 イルカは不思議そうな表情で、部屋にあがって鏡を見る。 「なんですか、これ!」 「俺が訊いてんですよ」 「武将!?」 「あぁ、それはそれっぽい」 「あなたの仕業ですね」 「なぜ断定できるのかが理解できない」 イルカの瞳がキラリと光る。 「消去法です!」 「消し方がおかしいことだけは分かりました」 「内容も確認せずにおかしいだなんて、なぜわかるのですか!?」 「確認せずともおかしいと気付ける結論だと、なぜ分からないんですかねぇ」 「分かりたくないからです」 「よし、会話をしましょう。会話はキャッチボールとはよく言ったもんです。まずは基礎の日常会話から――今日も暑かったですね」 「おかげでカカシ先生の頭に、びっしりカビが生えちゃいましたよ」 「あんた、どんだけ残念な子なんですか」 「ほら、早くキャッチしてください。会話はナマモノですよ。この程度の暴投がキャッチできなくて、世の中を渡っていけるなんて生ぬるい考えをお持ちなんですか!?」 「お持ちだよ!」 「さっさとお捨てなさい」 「全てを捨てて、そっちサイドに行ったら楽なんじゃないかとたまに思います」 「では、あなたにその一歩を踏み出す勇気を差し上げましょう」 チョンマゲのカツラがカカシにかぶせられる。が、髪の毛のせいで妙に浮いていた。 「この程度のカツラも自由に操れないなんて、カカシ先生はそれでも上忍ですか!?」 「上忍の実力を見せてあげましょう」 カカシは構えた。 「中忍の逃げ足の早さを見くびらないでいただきたい」 イルカは逃げた。 翌日、武将に追いかけられていたというイルカの噂がそこかしこで聞かれたそうだが、それはまた別のお話。 2010.07.05 |