ロックオン
イルカは、喫煙所で眉間にシワを寄せながら煙を吐いていた。 「何か悩みごとか?」 アスマがイルカの隣に腰を下ろす。 イルカは、ゆっくりとアスマに顔を向けた。 「四つん這いでゴキブリのように素早く動けたら、気持ち良さそうですよね」 「……すまん、意味が分からんというより、お前が分からん」 「ほら、カサカサカサカサァと移動する様って、自由で素敵だと思いません?」 「せめて哺乳類が疾走する様なら理解できたのかもしれねぇが……」 イルカはアスマの肩に手を置き、ゆっくりと首を横に振る。 「今からでも遅くありません。想像してみてください。アスマ先生なら共感していただけると、俺は確信しています」 「お前が手遅れっぽいんだが。っつーか俺を巻き込むんじゃねぇ。それに、そういう話はカカシにするのが一番だと思うぜ」 「カカシ先生、一週間くらい任務で外に出てるんですよ。問いかけをしたくて堪らない時に不在だなんて、本当に使えない方だ」 「一応任務なんだから、そう言ってやるなよ。帰ってきたら、まとめて問えばいいじゃねぇか」 カカシ不在の今、イルカのターゲットは俺だ――。 瞬時に悟ったアスマは、カカシを褒め称え、そして帰りを待つよう誘導する。 次の日、再び不可思議な質問をしてきたあたり、誘導に失敗してるようだったが、めげずに昨日と同じセリフを繰り返す。 カカシなら、お前のその問いかけに、満足のいく答えを出してくれるはずだ――と。 三日後、アスマはカカシに会った。 「ごくろうさん。イルカには会ったか?」 「いや、今帰ってきたところだから」 「そうか」 アスマはふと思い付き、問いかけてみる。 「四つん這いでゴキブリのように素早く動けたら、気持ち良さそうだと思わねぇか?」 「来世でゴキブリに生まれ変われるよう、一日三度祈ってやる」 そうか、そんな返しでよかったのか。分からないと答えるから、イルカの妙な説明が始まったんだな。 納得しながら、アスマはクソの役にも立たない知識を一つ得て、日常に戻っていったのだった。 2010.04.13 |