眼鏡効果

イルカが眼鏡をかけながらご飯を作っていた。

放っておこうかとも思ったが、とりあえず聞いてみる。

「老眼ですか?」

「なぜあなたの口は、そう余計かつ無意味で間違った情報ばかりベラベラベラベラ出てくるんですか」

「じゃあ、目悪くなったんですか?」

「いえ、頭が良さそうに見えるかと思って」

「頭の悪い回答を、どうもありがとう」

「どういたしまして」

「ところで本日の夕飯はなんでしょう」

「トマトベースの野菜スープとハンバーグですよ。スープの方は初めて挑戦するんですが、レシピは八百屋のおばちゃんにいただいたので、バッチリなはずです」

しばらくすると、肉が焼けるいい匂いがただよってきた。

笑顔でイルカは出来上がったものを持ってくる。

「はい、カカシ先生。とんでもないものができちゃいました」

「ちょっ……どっちの意味で!?」

「俺的にはいい意味で」

「世間一般では悪い意味の臭いがぷんぷんしやがりますね」

「香りはいいですよ」

「香りは、ね」

カカシは置かれたスープの色を見て、半眼で笑った。

「っつーか、トマトベースで紫の汁って、どういうことですか」

「俺が訊きたいくらいですよ」

「いや、作った本人が訊くなよ」

「まぁ食べてみてください。美味しいかもしれないんで」

「味見は!?」

「今回に限って言えば、してません」

「じゃあ今しろ」

「嫌ですよぉ、こんな紫の物体」

「そもそも何故紫になったんですか?」

「たぶん、眼鏡が湯気で雲ってたんで、トマトジュースと間違えて、飲みかけのグレープを入れたんじゃないかと」

「八百屋のおばちゃんにレシピを聞いておきながらトマトジュースを使用するとか、何気に失礼だな、おい」

「他の野菜は八百屋で買ったんで、食べないともっと失礼です」

「とりあえず野菜に謝ってください」

「野菜さんごめんなさい! 食材を無駄にしないために、カカシ先生に完食させるから許して!」

「野菜が許しても俺が許さねぇですよ?」

「俺の作ったご飯が食べれないとおっしゃるんですか?」

「あんたも食えとおっしゃってるんです」

「ティッシュ買うの忘れたー!」

突如走り出すイルカ。

「逃がすかぁぁぁ!」

すかさず捕まえるカカシ。

結局二人で食べることになったのだが、トマトスープになるはずだったソレは普通に不味いだけで、劇的な不味さを期待していたイルカは、非常につまらなさそうな表情をしていたという。

次の朝、イルカの眼鏡が何者かによって粉砕されていたのだが、犯人はまだ捕まっていない――


2010.02.17

 

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