風呂あがり

カカシが夜遅くにイルカ宅に行くと、家主が全裸で仁王立ちしていた。

「お邪魔します」

何事もなかったかのように、カカシは靴を脱いで上がり込む。

イルカは座布団を用意し、台所に移動した。

「寒かったでしょう。すぐに熱いお茶いれるんで、ちょっと待っててください」

「寒いという認識はあったんですね。よかった」

「そりゃ風が冷たくなったんですから、誰でも認識してますよ。おかしなことを言いますね」

「おかしい人間におかしいと言われても、腹は立たないものなんだと知りました。っつーか服を着ろ」

イルカはハッとして、バタバタと脱衣所に向かい、腰にバスタオルを巻いて再登場した。

「あんな格好で失礼しました」

「この格好は失礼じゃないんだ。っつーか、俺が言いたいのは前を隠せとかではないんですが」

「じゃあ外しますね」

「ごめんなさい、バスタオルは巻いててください」

「謝るくらいなら、最初から文句を言わないで欲しいですね」

「え? なんで俺、こんな格好の人間に怒られてるの?」

「怒っているんじゃありません。むしろ悲しみ、カカシ先生の更正への道を模索しているのです」

「そういや、バカは風邪引かないそうですよ」

「よかったですね、カカシ先生」

「ええ、イルカ先生が風邪を引かなくて、本当によかったです」

イルカは目を丸くする。

「俺は普通に風邪を引きますよ?」

「じゃあ服を着ろ。冬到来時に全裸とか、どんなやんちゃっぷりだよ」

「湯船にゆっくりつかったんで、暑かったんです」

「俺がここにきて結構な時間が経ってますが、まだ暑いんですか? 五感はちゃんと機能してますか?」

「今は寒いですよ?」

「早く着ろ」

「着たら負けだと思って」

「戦ってる対象が皆目見当つかねぇよ!」

「強いて言うなら、己自身」

どこか遠くを見つめ、渋い声でそう言いながらイルカはブルリと震えた。そしてそそくさと寝巻きを着用する。

「まだ寒い。風邪でしょうか」

「たんに体が冷えただけだと思います」

「それじゃあ、もう一回風呂入ってくるんで、お茶の続きはご自分でどうぞ」

さっさと姿を消し、再度全裸で登場したイルカは、そのままの姿でカカシに説教をくらうのだが、それはまた別のお話。

次の日も、イルカは元気に出勤したそうな。


2009.11.16

 

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