サービス

イルカが自宅の扉を勢いよく開けた。

「カカカシ先生!」

「一個『カ』が多いですよ」

「サービスです」

「こんなに嬉しくないサービスは初めてでした」

「俺もこの間、きゅうりを買ったら一本おまけしてもらったんですがね、個人的にはナスビが欲しかったと思ったものです」

「似て非なる話だとお伝えしておきましょう」

「きゅうりは味噌をつけて美味しくいただきました」

「充分サービスと呼ぶにふさわしいレベルのおまけじゃないですか」

「……本当だ!」

イルカは一瞬驚愕の表情を浮かべたが、すぐに真顔に戻った。

「それはさておき、俺はいったい何を伝えたくて勢いよく帰ってきたのでしょうか」

「脳の記憶領域にエラーでも発生しましたか?」

「くそっ、きゅうりが俺の脳内ででしゃばるから、こんな暴言を吐かれるハメに……!」

「きゅうり悪くねぇですよ」

「知らず罪を犯しているなんて、きゅうりにはよくあることです」

「よくあってたまるか」

イルカは、困った人間を相手にする際に浮かべる表情をカカシに向けた。

「あなたはきゅうりの事を何一つ分かってないんですね」

「むしろあんたは何を悟ったというのか」

「ちょっぴり悪戯好きな小悪魔風きゅうりの全て……とでも申しましょうか」

「思い付きで申すのやめてください」

「暗に俺に喋るなと言ってるんですか!?」

「思い付き以外は口にしてないのかよ」

「正解者に拍手!」

「心底うれしくねぇ!」

「そのままの勢いで俺が飛び込んできた理由も当てて、二問連続正解といきましょう!」

そういえば、壊れたテレビを殴ると、たまに映る事があったよな。

カカシはそんな事を考えながら、静かに拳を握りしめたのだった。


2009.9.15

 

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