座禅

「カカシ先生、座禅しましょう」

「嫌です」

「つべこべ言わず、早く」

イルカに急かされ、カカシは仕方なく座禅を組んだ。

しばしの沈黙。

「つまらんっ!」

「やる前から分かってたでしょうに……というか、座禅する目的が致命的に分かってませんね?」

イルカは考え、そしてハッと表情を引き締めた。

「俺、殴る人するんで、カカシ先生殴られてください!」

「殴る人じゃねぇ! 今すぐ禅寺関係者に謝罪しろ!」

「誠意のない謝罪を関係者が聞いても、むしろ腹立つと思うんですが」

「よし、その根性を叩き直してもらえ」

「根性なんてのは、本人に直す意思がなければ他人に何言われても……いや、他人に言われるからこそ余計な反骨精神芽生えて、結果、ひん曲がっていくんですよ」

「ひん曲がっちゃったんですね」

「まだ曲がってる最中です」

「自覚があってよかった」

「カカシ先生は自覚がないようで」

「全力で失礼な。俺は人様の言葉を真摯に受け止め、日々まっすぐ生きようと……」

「結跏趺坐はなかなか難しいなぁ」

「って、聞けよ、おい」

両足首を太ももに乗せようとして失敗しているイルカを咎めると、件の人物は背中を床につけた間抜けな体勢で、再びハッと表情を引き締めた。

「すみません、カカシ先生の話が面白くなくて」

「謝罪する気が、まるでねぇな」

「だから誠意のない謝罪は腹が立つと言っておいたのに」

「うるせぇよ」

カカシが蹴飛ばすと、イルカが凄い勢いで背中を軸に回転し始めた。

――また座禅すると言い出すかもしれないし、早々に警策を用意しておこう。

未だ回転を続けるイルカを見つめながら、カカシは真剣に棒の購入を考えたそうな。


2009.5.3

 

close