丸薬
「肌荒れてますねぇ」 カカシのほっぺたにできた吹出物を指で突き刺す。 「やめて、地味に痛い」 「そんなカカシ先生に朗報。年齢による衰えでできた吹き出物が3時間で治る丸薬サプリをアナタだけにご紹介です!」 テーブルの上に瓶を置く。親指程もある茶色の丸薬が入っていた。 「粒がデカすぎだろ。あと速効性がありすぎて怖い」 「飲む前から尻込みとは、カカシ先生も軟弱になりましたね」 「煽られても飲みませんよ?」 「アナタだけに……アナタだけにご紹介なんですよ!?」 「むしろ他の人間にも紹介できる物を勧めてください」 「他の人間に紹介するためには、まずデータが必要なんです」 「人体実験かよ」 「違います。ちなみに、カカシ先生は今現在風邪など引いてませんよね? できれば一週間拘束させていただいて、禁煙と食事制限もしていただきたいんですが」 「なぜ『違います』と言い切れるのかが分からん」 「俺の中では何かが違うからです!」 「やかましい! 自分で飲みやがれ!」 イルカは丸薬サプリを見つめた。 「茶色のサプリメントは口にするなとの先祖の遺言がありまして」 「どんなシチュエーションでそんな遺言を残す気になったんだよ、先祖。おかしいだろ、先祖」 「先祖がおかしいわけではありません。そう、先祖が生きた時代の世の中がおかしかったんです」 「おかしいのは子孫だったんですね」 「子孫は品行方正で、遺言を守り通す素晴らしい人物です」 「言うのは自由ですからね」 「認めてくださるのも自由ですが」 「認めない自由を選択します」 イルカは、丸薬サプリの瓶をカカシの方に押しやった。 「そんな意固地なあなたには、この丸薬サプリ! 頭と心をを柔軟にする成分配合です!」 「成分表を見せやがれ」 「企業秘密です」 「本当に効果あるんですか?」 「プラシーボ効果に期待が高まります」 「さっさと捨てろ」 「イワシを十本磨り潰した俺の苦労を無にするつもりですか!?」 「イワシ以外に、なにを入れました?」 「ゴボウや小麦粉を少々」 「……これを夕飯にします」 「じゃあ俺は外食してきますね」 逃げるイルカの首根っこを掴む。 こうして二人は侘しい夕食を開始したのだった。 2009.4.2 |