珍品
「ギャース!」 朝からイルカが悲鳴をあげていた。 「ってか、ギャースはねぇだろ」 布団にくるまりながらカカシが呟き、そして寝る。昨夜、アスマや紅とイルカ宅で遅くまで飲んでいたから、まだ眠い。 「ちょっ……カカシ先生、この状況で再度寝るとか、おかしくないですか?」 「おかしいのは、あんたの存在です」 「くそっ、深刻かもしれないというのに、状況も確かめずに惰眠を貪るとは、昨今の忍の質も落ちたもんだ」 「深刻な事件が発生してるのに、ふざけた悲鳴あげてる忍の方が問題ですけどね」 「ふざけてなどいませんが?」 「ある意味、その方が大問題だよ」 「まぁ、それより俺の悲鳴の理由を聞かせてあげなくもないですよ?」 「もったいぶらずに、言いたけりゃ、さっさと言ってください」 「足が人魚のように魚類と化した!」 「海かえれ。さもなくば三枚におろす」 「目が覚めたら、巨大な毒虫になっていた!?」 「毒を抽出して、誰に売り払おうか」 「反応がない、ただの屍のようだ!」 「ベラベラよく喋る屍だな、おい」 「うむ、反応が返ってくると、喋るのにも気合いが入りますな」 「……」 イルカが、静かになったカカシ目掛けてダイブする。 カカシはくるまっていた布団ごと、イルカを蹴りあげた。 「痛い! 何をするんですか!」 「こっちのセリフですよ。まったく何を考えているのか」 「何かを考えての行動だなんて思わんでください」 「あんたの頭は何のために乗っかってるんですか?」 「オブジェです」 「ほぉ、珍品ですな」 「高価なので手を触れるのはご勘弁を」 「俺たちは、どこまで頭の悪い会話を続けるのでしょう」 「頭が良くなるまでだと思います」 カカシは布団を手繰り寄せ、再度くるまって寝に入った。 「なに第三者面してんですか」 イルカが布団を引っ張る。 「やめて、巻き込まないで」 必死に抵抗するカカシ。 「そんなことより、カカシ先生、あれ見てくださいよ」 カカシは気だるげに、イルカが指す方に目を向けた。 枕の少し上に、正座をしながら半目で寝ている紅がいた。 酔っぱらって帰ったと思いきや、戻ってきてしまったらしい。 珍品過ぎるオブジェを前にして、カカシは奇妙な悲鳴をあげたそうな。 2009.2.22 |