お年玉

「イルカ先生、今更ですが今年の抱負って何ですか?」

「カカシ先生からお年玉を貰うことです」

「辞書で【抱負】を引け」

イルカが辞書をめくり、真顔で読み上げる。

「心に抱いた決意」

イルカはしばし目を閉じていたが、やがて静かに告げるとともに、手を差し出した。

「あながち間違っちゃいない」

「成人男性がお年玉貰おうとしてる時点で、まるごと間違ってんですよ」

「くれ」

「人の話をきけ」

イルカの手を叩き落とした。

「普段なら『お断りだ!』と言うところですが、今年の俺はひと味違います」

イルカが小さな袋をカカシに手渡した。膨らみから見て、小瓶が入っているのだろう。可愛くラッピングされていた。

「福袋です」

カカシが中身を確認する。

七味唐辛子が入っていた。

「嬉しいですか?」

「普通に感想求められても……」

「賞味期限が十年前なんです」

福袋なる物が、壁に一回ぶち当たり、ゴミ箱へと吸い込まれていく。

「酷い! カカシ先生と一緒に買った、初めての調味料なのに!」

「出会って十年も経っとらんわ!」

「俺の茶目っ気ある冗談を見抜く速度が、確実に増してますね」

「心底嬉しくねぇ」

「ひと味違う俺を、今年もよろしくお願いいたします」

「違いが分かりません」

「年越したからって、そんな数週間で人間変わったら怖いですよね」

「そうですよねぇ」

ギリギリと奥歯を噛み締めながら笑うカカシ。

相変わらず――そんな言葉がよく似合う二人のお話。


2009.1.13

 

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