雪玉

「あんまり寒くならないですねぇ」

 窓の外を見ながらイルカがポツリと言った。

「寒くなったら、雪合戦がしたいんです――とか言うのはやめてくださいね。寒いし疲れるし生産性もないし」

カカシは本のページを捲りながら欠伸をする。

「……参加させてあげませんからねっ!」

「不参加の意思表示をしたところですが」

「満面の笑顔で雪玉を投げ合うアスマ先生と紅先生、そして俺。想像してみてください。羨ましくなるはずですから!」

カカシはあさっての方向に目をやりながら想像してみる。そして小さく頷くと、イルカの目を見据えて言った。

「キモいです」

「同感です」

「羨ましくなるシチュエーションをお願いします」

「雪玉の中身は特製手裏剣! 気付けばみんな血まみれだー!」

「人の話を聞いていたとは到底思えない展開ですね」

「聞いた上でアレンジを施しました」

「素晴らしいアレンジですが、残念ながら凡人には理解できない高レベルなものだったようです」

「嫌みのフリした称賛ですね?」

「捻りもなにもなく、ストレートに嫌みで申し訳ない」

「いえいえ、こちらこそよもや直球だとは気付かず、称賛などと誤解してお恥ずかしい限りです」

「相変わらず幸せな頭してますね」

「あなたには負けますけどね」

微笑み合う二人に、もはや言葉は不要だった。

静かに開始された拳のぶつかり合いは、イルカが白目をむいて終わりをむかえたという。


2008.10.30

 

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