スズメ
「カカシ先生、俺、気付いたことがあるんですけど」 「脳内にしまい込んでおいてください」 二人は静かに茶をすすって一息つく。 「最近のスズメって無防備ですよね」 「しまい込んでおけと言ったはずですが?」 「時おり反抗したくなるやんちゃ心をお許しください」 「許したくなくなるフレーズですね」 「もっと心に余裕を持った方が良いですよ」 「普通に失礼だな、おい」 「さておき、スズメに話を戻しましょう」 「まるで戻ることが当然のような話しっぷりですね」 「帰り道でスズメが前方にいまして」 「無視ときたもんだ」 「手を伸ばせば捕まえられそうな距離だってのに、逃げないんですよ、そいつ」 「……で?」 「もしスズメの危険感知の能力が種として低下しているとしたら……焼き鳥スズメ専門店が開けるんじゃないかなぁと思いまして」 イルカは真顔だった。 「その辺のスズメ焼いちゃダメでしょ」 「現在店で出されてるスズメも案外……」 「とりあえず、焼き鳥屋店主に謝っときなさい」 「申し訳ござらぬ」 「謝る気ねぇな」 「しかし、良いアイデアだと思うんですけどね。狩猟は古来より人間のDNAに刻まれた生存本能ですし。捕まえた獲物で一儲けできれば申し分ないじゃありませんか。っつーか、捕まえてみたかったんですよ」 「長々と要らん説明した挙げ句、結局言いたかったのは、それかよ」 イルカは気味悪そうにカカシを見た。 「カカシ先生は……そんなにスズメばっかり食いたいんですか?」 「なんで俺が提案したみたいになってるの!? っつーか食わねぇよ」 「カカシ先生はスズメ食べないんですか? そうすると、本日は夕飯抜きにかっちゃうんですが」 「今日はスズメオンリーなの!?」 「ええ、これから外行って再挑戦してこようかと」 「……素麺ゆがくから、大人しく座っててください」 暑いから、火の近くに寄りたくなかっただけか。 素麺を用意しながら、カカシはそう納得したのだった。 2008.7.9 |