大人とは

「カカシ先生!」

イルカが手を振りながら早歩きでやってきた。

廊下で話していたカカシとアスマが振り向く。アスマは「そうだ」と、二人に向かって話しかけた。

「お前ら今日暇なら一緒に飲みに……」

「潰す!」

間合いを一気に詰めてくり出したイルカの拳が、虚しく空を切る。カカシは後方に飛んで避けていた。姿勢を低くし、イルカの次の動きに目を光らせている。

「おや? アスマ先生、ご無沙汰しております」

なにごともなかったかのように涼しい顔でイルカは挨拶した。

「もう少しご無沙汰しててもよかったような気がしたぜ」

「もしかしてお邪魔でしたか? 申し訳ありません、カカシ先生の姿が見えたものですから。ちなみにアスマ先生はカカシ先生とかぶってたんで、額から上しか見えず、まるで髪が雑草のように幻想的に見えたとだけお伝えしておきます」

「お前が見た光景を想像できんのだが……」

「それは残念です。どこか儚くもある印象的な光景でしたのに」

会話の合間に「キシャー」とカカシを威嚇するイルカ。カカシも負けじと応戦している。

「ちょっとお前ら落ち着け。野生に返る一歩手前だぞ」

「野生を忘れては弱肉強食のこのご時世、生きていけませんよ?」

「うるせぇ、もっともらしいセリフ並べんな」

「難しい年頃なんですね」

「一番難しいのはお前の脳内だよ」

「アスマ良いこと言った。そうだよな、いがみ合いは何も生み出さないよな」

「俺、そんなこと言ったか?」

そんなアスマのセリフを無視して、カカシはイルカに視線を移していた。

「イルカ先生、ここはお互い大人なんで、昨日大福をこっそり食べた事は謝りますから、水に流して三人で飲みに行きましょう」

「沸点の低い大人だな。ある意味怖ぇよ。っつーか行かねぇよ。俺を混ぜるなよ」

「付き合いも社会人のたしなみですよ?」

「人に奇行を見せつけるような奴には言われたくないセリフなんだが」

「自分から誘おうとしたくせに、いきなり態度を変えるのは、大人としてどうかと思うぞ」

「うるせぇよ!」

なんだかんだで飲みに行った3人。飲み屋でアスマが大人について4時間語ったそうだが、聞いている者はいなかったという。


2007.11.08

 

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