漬物
「俺、昔から思ってたんですけど……」 イルカはそう言うと、カカシの顔を見ながらキュウリの漬物を一つ口に放り込んだ。 パリポリポリポリポリ―― 「はよ喋れ」 「この漬物、美味いなぁ」 「誰が漬物の感想を口にしろと言いました?」 「知りませんよ」 「俺もだよ」 「まぁまぁ、ご飯時に険悪なムードになるのも何ですし、ここは一つカカシ先生が折れて謝ってください」 「都合が良すぎて、目玉飛び出そうになるくらいたまげる発言をありがとう」 「どういたしまして」 「皮肉も通じねぇのかよ」 「でも目玉は出さないでくださいね。食べれない物を食卓に置くの好きじゃないんです」 「俺の目玉は造花扱いですか」 「厚かましいですね。むしろ弁当買った時に入ってる緑のヒラヒラが、あなたにはよく似合う……」 険悪なムードになった。 「今です! 謝ってください、カカシ先生!」 「無茶言うな!」 「この重苦しい空気の中での食事は辛いんです」 「重苦しくなった結果だけ見て安易に解決策を探してはいけませんよ? 過程を考える事が更なる失敗をしないための基本ですよ? あと俺の言葉が丁寧かつ微笑んでいるからって、怒ってないと思ったら大間違いですよ?」 パリポリポリポリポリ―― 「漬物食ってんじゃねぇ!」 「むしろ、あんたも食え!」 イルカはカカシの口に漬物を放り込んだ。 「ほほぅ、これはなかなか……」 カカシが味わいながら音を楽しみ始める。 こうして食卓の平和は守られた。 イルカが昔から思っていたことは何なのか……すべては謎のまま、忘却という名の闇へ葬られたそうな。 2007.10.12 |