セオリー
「いらない雑誌とかありますか?」 イルカの問い掛けに、カカシは首をひねってから「ありません」と言った。 「チッ使えない男ですね」 「いきなり舌打ちかよ」 「自然に漏れた舌打ちなので、俺の意思は含まれておりません。お気になさらず」 「意識的にされた方がマシでした」 「チッ」 「嘘です。ムカつきます」 「なぜ嘘なんて吐いたんですか!?」 イルカは驚きの声をあげた。 「……驚くところでしたか?」 「いえ別に。会話にも起伏が必要かと思いまして」 「いりません。気のせいです。ところで古雑誌を何に使うんですか?」 「キャンプファイヤーでもしようかと思いまして」 「このクソ暑いのに」 「一人で」 「心に冬が到来してますよ」 「じゃあ、セオリー通りに、カカシ先生のエロ本を燃やしますね」 「やめて焚書坑儒。ってか、会話しろ。『じゃあ』の使用方法はそうじゃない。そろそろ気付け」 「そこが俺の良いところだと思っているくせに!」 「どこまで幸せな思考回路してんだ!」 イルカは一瞬間を置いて、どこか遠くを見つめながら言った。 「どこまでも」 「うるせぇよ」 カカシは一撃でイルカを昏倒させた。 意識を取り戻す前に本を隠す事は忘れない。 これは「案外、会話を成立させるのって難しいね」というお話。 2007.08.01 |