トトカルチョ

アスマと紅が喫煙所で睨み合っていたので、カカシとイルカは煙草を吸いながら傍観していた。

「乱闘始まりますかね」

心配した様子もなく、イルカはそんな事を口にした。

「さすがにないでしょう。罵り合いくらいは始まるかもしれませんが」

「それじゃあ、紅先生に千円」

「いきなり賭け事を始めんでください」

「暇潰しに煙草吸いに来たら、暇潰しになりそうな状態だったもんですから」

「止める事で暇を潰そうとは思わないんですね」

「命を賭して暇を潰したところで、俺に何の得があるんですか?」

「英雄、ここに眠る」

「あんたが眠れ」

「俺が仲裁に入ったら、眠りにつくのはあの二人ですよ」

バン!

突如鳴り響いた音にビクリとカカシがはねた。

「あんたは何も分かっちゃいない!」

見ると、イルカは悔しそうに自分の左膝を叩いている。

「仲裁に入るだなんて冒涜です。二人の人間が互いに知力を競べ、いずれの者がより神の恵みを厚く受けているかを知らしめる。それはつまらぬ口論にあらず。もはや神事なのです!」

「んなわけあるか」

「卜知が博打とは、これ如何に!」

「要約すると『金賭けましょう』じゃねぇか!」

「曲解はやめてください」

「それ以外の解釈ができる発言してから言ってください」

途端、カカシを見るイルカの目が、哀れみを含んだ優しいものに変わった。

「想像力が豊かすぎて、様々な憶測に囚われてしまうんですね」

「あなたほどではありません」

「嘲りですか!?」

「あんたこそ嘲り半分だったのかよ!」

「丸ごと嘲りでしたが」

「堂々と腹立つ発言しやがった!」

不意に訪れた静寂。

騒いでいる最中、示し合わせたかのように静まり返る瞬間が時折ある。まさに今がそうだった。

「イルカに三千円だ」

「それじゃあカカシに一円」

静寂を破る声の主は、言わずと知れた男女二人。

イルカは二人のやり取りを聞いて、思わず割って入った。

「俺はカカシ先生に五千円!」

「堂々と八百長しようとするな!」

怒鳴るカカシを一瞥して、イルカは溜息を吐く。

「カカシ先生、なにをそんなに怒っているんですか?」

「無駄な体力消耗するなよ」

「余裕がなくてみっともないわね」

その直後、カカシが「お前ら全員眠りにつけー!!」と言って暴れまわったそうだが、目撃者はいなかったらしい。

勝者は誰だったのか……それは当人たちのみぞ知る。


2007.06.26

 

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