心配

「なんだか最近、調子悪いんですよねぇ」

風呂掃除を終えたカカシが肩を回しながら戻ってきた。

「腐った物は出してませんよ」

洗濯物をたたみながら、イルカは横目でチラリとカカシを見る。

「ちょっと待て。心配するとか、そんな素敵な選択肢がなかったのか本気で尋ねたいですが」

「心配してますよ。当たり前じゃないですか」

イルカは微笑み、そして続けた。

「潰すなら今ですよね」

「今の会話の流れは、明らかにおかしいだろうが」

「何でも自分の常識を基準に考えてはいけませんよ。おかしいと思っていても、実はおかしくない事なんてたくさんあるんです」

「自分の常識以外で、何を基準にしろと?」

「全てを受け入れる勇気を持ってください」

「あんたを野放しにする気はありません」

「いやですねぇ、まるで人を非常識の塊みたいに」

笑いながら、イルカは洗濯物をカカシの顔面目掛けて投げつけた。

「イルカ先生、洗濯物はたたむ物であって、投げる物じゃありませんよ?」

右手にズボンを持ったカカシが窘める。

「では、一緒にたたんでください」

「はいはい」

カカシはイルカの正面に座り込んだ。二人とも黙々と洗濯物をたたみ始める。

──と、

「調子が悪いって仕事の事ですよね。何があったかは知りませんが、カカシ先生なら大丈夫ですよ」

イルカは優しい口調でそう言った。

「イルカ先生……」

カカシが手を止めて顔を上げる。そこにはとても良い表情をしたイルカがいた。

「根拠もなく『大丈夫』なんて言われると、精神的にくるものがありますよね、カカシ先生」

「喧嘩売ってんなら買いますよ?」

「どこのゴロツキですか」

「肩がこってるゴロツキだよ」

「仕事は関係なかったんですね、四十肩」

「失礼極まりねぇな、おい」

「俺はカカシ先生を本当に心配して言ったのに!」

「心配して言ってるセリフが一つも見あたらねぇよ!」

「受け取り方は人それぞれですから」

イルカは寂しそうに笑った。

「その笑みで全てが解決するとお思いですか?」

「本日、笑顔の大特価です」

「低価格で夢も売ってください」

「欠品です」

カカシが肩を回しながら臨戦態勢に入ったのは、それから数秒後の事だったそうな。


2007.06.22

 

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