行事

イルカは自室で楽しそうにプランを練っていた。

「……ラストは生理的に嫌な物が入った箱に手を突っ込んでもらおうかな」

「いったい何を企ててるんですか?」

イルカはビクリと体を震わせ、来客に向き直る。

「か……カカシ先生、今の聞いてました?」

顔を赤らめ、イルカは照れたように頭を掻いた。

「聞いてましたが」

「まいったなぁ。ビックリさせようと思ったのに」

「たった今、いろんな意味でビックリしましたよ」

「当日まで秘密にしておきたいんで、ちょっと向こうに行っててもらえます?」

「行けない要素がてんこ盛りなんですが」

「ビックリさせたいって言ってるじゃないですか」

「なんであんたの『ビックリ』はマイナス方向しか目指してないんですか!?」

「山椒は小粒でもぴりりと辛いんですよ!?」

「知るか! 会話しろ!」

「無茶言うな!」

「無茶なの!?」

そこで我に返ったカカシは、ゴスッと音を立ててイルカの頭に拳を振り下ろした。

「喜ばせようと思ってプラン練ってただけなのに……酷いですよ」

頭をさすりながらイルカが項垂れる。カカシは苦笑しながら、俯いているイルカの頬を両手で覆った。

「生理的に嫌な物が入った箱で誰が喜ぶか! どんなパンドラボックスだよ、おい!」

そして、そのまま力任せにイルカの顔面を潰しにかかった。

「さ……最後に希望が!」

「そんな得体の知れん希望、いらんわ!」

こうしてイルカのビックリプレゼントは企画倒れとなった。

 

後日、カカシは気になったので訊ねてみた。

「あれ、一体何の催し用だったんですか?」

「父の日です」

「誰があんたの父親か」

「いやぁ……あの時期は行事が少ないんで、かこつけて騒ごうかなぁと」

今度は母の日にも気をつけよう。

カカシは本気でそう思ったそうな。


2007.06.11

 

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