悩み

「今日ですね、同僚に『悩みがなさそう』と言われまして」

言いながらイルカは眉をひそめた。

「いつも笑顔だからといって、悩みがないわけじゃねえ! ……つまりそう言いたいと」

「悩んでないのがバレた!」

「少しは悩め」

イルカが黙考する。やがて悩むべき事を見つけたのか、イルカは真顔で手を差し出した。

「さしあたり……金?」

「あげねぇよ」

ペシッと手のひらを叩いた。カカシに叩かれた手を見つめながらポツリと言う。

「今の暴力、示談金によっては話し合いをしてあげてもいいんですが」

「示談と金の順序が逆だとだけ申し上げておきましょう」

「この家、治外法権ですから」

「話が繋がってるようで、まったく繋がってないと付け加えておきます」

「どうやって金を払わせるか悩め……あなたはそう仰りたいんですね?」

「話繋げるどころか捏造ですよ、それ」

「望むところです」

「なにを望んでいるかまったく分かりません」

──悩む、というより頭使ってないなぁ、この人。

カカシはこの不毛な会話を「お腹減りました」の一言で終わらせたという。


2007.04.16

 

close