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ひき始め
「うぅむ」 イルカは唸っていた。 「お腹が空いて胃が痛いと、胃潰瘍の疑いがあるらしいですよ、イルカ先生」 「いったい何の話ですか」 「次の会話を想定して、先に答えを言ってみました」 「それはどうもご丁寧に。無駄な労力使わせて申し訳ありませんね」 「無駄な話をお聞かせして、こちらこそ申し訳ありませんでしたねぇ」 ギリギリとカカシは奥歯を噛み締めながら微笑んだ。 「まぁ、素敵な笑顔」 「胃潰瘍になりそうです」 「カカシ先生がですか?」 イルカは目を見開き、眉間にシワを寄せて確認した。 「俺が胃潰瘍になったら、どっかの荒神でも降臨するんですか?」 「体調の管理もできんのかと一瞬……ほんの一瞬思っただけです」 「顔全体が侮蔑に満ち溢れていたんですが」 「目、悪くなりましたね」 「なってねぇですよ」 「俺、目は良いんですが、少々世界が回っております」 「風邪なら寝てください。ってか体温計どこだ?」 カカシは薬の入った引出をあさったが見つからなかった。 「体温計は持たない主義です」 「そんなに生活困ってたんですか?」 「なぜならリアルな数字を見ると心が負けてしまうから!」 「無視かよ。っつーか弱い心ですね」 「でもダルいよぅ」 イルカはゴロゴロと床を転がりながら「ダルい」と繰り返した。 「いますよね。自分の体調不良をアピールしまくる人」 ピタリとイルカの動きが止まる。 「ええ、ここにいますよ」 「開き直ったよ、この人」 「うぅむ、運動したらお腹も減ってきた。スキヤキ食べたいです」 「胃の丈夫な病人だな、おい」 「それを食べて回復します」 「それを食べれる時点で回復してませんか?」 「わーい、今夜はスキヤキだ」 「無視かよ」 イルカはもりもりと肉を食らった。そして寝た。心なしか、いつもより肌のツヤが良い。 「回復……したんだよな」 納得のいかぬ顔で呟くカカシだったが、次の瞬間には考える事を放棄した。 もはや風邪だったのか確かめようもないから。 これは、風邪のひき始めは体力つけて寝てしまえ、というお話。 2007.03.26 |