饅頭

イルカは至極真面目な顔をしていた。

「饅頭怖い」

カカシは本から目を離さず答えた。

「怖い饅頭はここにないですよ」

「ないですよねぇ」

「ええ、その通りです」

何も乗ってないちゃぶ台をひっくり返すイルカ。飛んできたそれを避けるカカシ。

一瞬後には静寂が場を支配した。

イルカは真顔のままちゃぶ台を元に戻しながら言う。

「驚いたフリくらいしてくださいよ」

「力に訴えたあげく、俺のリアクションに苦情とか勘弁してください」

「突風でちゃぶ台ってひっくり返るんだなぁ」

「嘘を吐くなら、せめて3秒くらいは騙せるレベルでお願いします」

「あなたの力添えがあれば騙せますが」

「たとえ3秒でも信じるの無理です。っつーかあんたの目的が見えないんですが」

イルカは微笑んで答えた。

「カカシ先生とお話したかっただけです」

「とりあえず言ってみただけ感溢れるセリフはおいといて」

「とりあえずでも言ってみたんだから喜んでくださいよ」

「無茶言うな」

「ところで話を戻しますが、饅頭怖い」

「あなたが恐怖する饅頭を、どうして俺が買ってこれましょう。つまりこれが愛」

「饅頭食べたい」

「あんたの腹のお肉が増えるからダメ。つまりこれも愛」

「愛という名の饅頭を俺に!」

「俺を使い走りにしようとしているあんたの愛はどこ?」

「ずっと遠いお山の向こうです。大切に埋めてありますよ?」

よし、饅頭は許可するが、その前にカロリーを消費させよう。

カカシの決意の下、三時間にもおよぶ攻防が始まった。

一時間過ぎた時点で饅頭屋は閉店を迎えていたが、それはまた別のお話。


2007.03.01

 

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