バーバー

カカシはソファーで雑誌を読んでいた。

イルカもまた、少し離れた場所で雑誌を読んでいた。頭上でハサミの音がする。

美容室に客二名と店員一人。

カカシは順番待ちである。

「……はい、できましたよ!」

客二人は顔を上げた。そして視線が一点に集まる。

ピョンと伸びた一本の触角もどきを少しの間見つめていた。

そして二人同時に再び雑誌に視線を落とした。

「「切れ」」

「お客さんたち、酷い! 私の最高傑作ですよ!?」

「人の頭で傑作を作らないでください」

「俺はもはや客じゃなくなったんで」

「お客さんたち!」

「俺は客じゃないと言ってるだろう。雑誌を読みにきただけの通りすがりだ。あとそこのイルカ先生も客じゃなくて被害者だから」

カカシは今月の占いのページを見ながら言った。

「……フフフ、そのセリフはこれを見てから言ってもらいましょう」

店員は不敵に笑うと、イルカの頭を軽く叩いた。

ふわりと立ち上がるもう一本の触覚もどき。途端、イルカの目が輝いた。

「満足していただけましたか、お客様」

イルカの頭上をクナイが通り過ぎていった。

パサリと落ちる触角だったもの。

「へぇ、今月の俺って、ちょっと攻撃的だそうですよ」

イルカは視線を雑誌に戻した。

店員は黙ってイルカの髪を切り始めた。

なにごともなかったかのように元通りとなった美容室の空気。壁に突き刺さったクナイだけが、いつまでも異様な光を放っていたそうな。


2006.11.18

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