夕飯

「カカシ先生、いらっしゃい。風呂にします? ご飯にします? 帰ります?」

「最後の選択肢は変でしょ」

カカシはそう言って流しながら、イルカの家に上がりこんだ。

「腹減ったんで、ご飯食べたいです」

「亭主面ですか? それともタカリですか?」

「ご飯にするか訊いておいて、最悪だな、あんた」

言って、カカシはイルカの正面に腰を下ろす。

「よもやそれを選択するとは思いもよらず」

「一つだけ毛色の違う選択肢があると、遠回しにそれを選べと強要されているようで、あえて選びたくなくなりますね。帰らねぇですよ」

「別に帰って欲しいとは思ってませんが」

「歓迎されてたんですか」

「別に帰って欲しくないとも思ってませんが」

「つまり?」

「どっちでもいい」

「案外予想通りの回答でした」

イルカは卓袱台を見つめながら、しばし何かを考えている。

「もっと面白い回答をお望みでしたか?」

「お望みではなかったので、ご飯食べましょう」

「文脈がつながってませんよ」

「通じればいいんです。ご飯食べましょう」

「つまりあなたの主張はこうですね。『やられる前にやっちまえ』」

「せめて話の流れだけはつなげていただかないと。会話ってキャッチボールですよ?」

「ど真ん中ストレート、時速は世界新」

「取れる玉を投げろよ」

カカシは茶碗を並べた。

台所に用意されていたおかずも並べた。

箸を出して、お茶まで入れた。

「米、あと10分しないと炊けないんです」

「先に言えよ」

夕飯は焼き魚だったそうな。


2006.10.01

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