粥
「体調悪いです」 イルカはボンヤリとした目つきで言った。 「そういえば顔色も少し悪いみたいですね。お粥作ってあげるから、それまで寝てなさい」 「看病イベントのフラグなんて立ってないはずなんですが」 「随分と色々なところが悪いみたいなんで、さっさと寝ないと強制的に寝てもらいますよ?」 「耳血とか出したくないんで寝ます」 「微妙に人聞き悪いな、おい」 「おやすみなさい」 イルカはペコリと頭を下げて寝室に去っていった。 お粥が完成したのは一時間半後の事である。 「イルカ先生、お粥できましたよ」 カカシが寝室を開けると、イルカが爆睡していた。 「ほらほら、お粥ができたんで起きてください」 イルカは気だるそうに上半身を起こした。病人というより、やる気のないオッサンのような動きだった。 「食べさせてあげますね。熱いですから冷ましましょう」 「許可なく粥を冷ますでないわ!」 「熱い言うとるだろうが」 「病気だろうが元気だろうが、俺は熱いもんは熱いまま食べる派です!」 「んじゃあ、食いやがれ!」 ガボリとイルカの口に粥が突っ込まれた。 「熱いわ!」 「ほれ、みたことか!」 「なぜか勝ち誇るあなたの態度が憎い」 「まぁ、ご自分で食べた方が安全という事で」 カカシはイルカに匙を渡した。 粥をガツガツと食べ始めるイルカ。あっという間に土鍋は空になった。 「気持ちいいくらいの食べっぷりですね。これなら体調もすぐ良くなりますよ」 「腹減ってただけなんで、食ったら治るの当たり前です」 「てっきり風邪だと思って『少し顔色が悪いみたい』なんて言っちゃってた俺って馬鹿みたいですね」 「はい、ちょっと馬鹿みたいですね」 そのセリフを合図に無言の戦闘が始まった。 時には盾に、時には武器にされた枕は再起不能になった。 「クッションって昼寝には良いんですが、夜寝るのに使用するには物足りないですよね」 「さっさと寝ろ」 次の日、店で枕を吟味するイルカとカカシの姿が目撃されたそうだが、それはまた別のお話。 2006.09.07 |