何か

『カカシ先生、こーんにーちはー』

扉を開けるなり、目が腐った魚のソレをしているスライム状の何かに挨拶された。

「……イルカ先生、こんばんは」

『おいイルカ、おまえ挨拶間違えてるじゃないか』

「間違えたのは君だよ」

どこで見つけたのやら、イルカは変な何かに手を突っ込み、ウネウネさせていた。

「一人遊びが上手ですね」

カカシはたいそう優しい眼差しでイルカを見た。

「相棒を見つけました」

『よろしくな、カカシ上忍』

「相棒選べよ。っつーかどこで購入したんだよ。むしろ仕入れた店の人間、頭わいてるよ」

「新規オープンした雑貨屋です。面白い物が他にもたくさんありました」

「うん、潰そう」

「村人Aにそんな権限がおありで?」

「人を勝手にグラフィックなさそうな役にせんでください」

『そうだよな。自分の世界では自分が主役だもんな。他人にとっては通りすがりの村人だったとしてもな!』

「村人じゃねぇけど、変なブツにもっともな事を言われて、なんだか気分は最悪です」

「そんな時には甘い物が一番ですよ。さぁお食べなさい」

イルカは相棒をカカシの口に突っ込んだ。

「相棒食わすな! っつーか甘い! キモい! 何ですか、コレ!?」

「おっきいネリ飴です」

「もうワケがわかりません!」

「目玉が欲しかったんで、夕飯にするつもりで買った魚の目をつけてみました」

「新鮮さの欠片もねぇ魚選びやめんか!」

「DHAの塊ですので、全部食べて健康になってください」

「その前に糖が出るわ!」

『イタいぃぃ、イタイようぅ』

「変なアテレコもやめい!」

「相棒食われちゃったんで、食ったあなたが次の相棒という事で」

「無茶言うな!」

口の端からダラリと飴を垂らしつつ、いちいち怒鳴り返してくるカカシに、イルカは何かしらの手応えを感じて満足げに夕飯の支度にとりかかった。

「放置するなー!」

人の話を聞かない人間に虚しくも怒鳴ってしまうカカシが飴を全部食べてしまえたのか……それは誰も知らない。


2006.08.01

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