肉
「そろそろ暑くなってきましたね」 イルカは自宅でウチワで扇ぎながら独り言なのか何なのかよくわからない音量でボヤいた。それを横目で見ながらカカシが言う。 「脱がんでくださいよ」 「俺の肉体美を披露する季節となりました!」 「聞け、そして自分に甘い評価をするな」 「失礼な。俺はこれでも密かに身体を鍛えてるんですよ?」 「そうだったんですか」 カカシは感心した様子でイルカを見た。 「ビールを飲んで」 「腹の肉を育ててどうしようってんだ、あんた」 「備えあれば患いなしです!」 「忍としての備えが何一つできてませんよ?」 「神が俺にビールを飲めと言ったんです」 「いつでもアンテナ三本な人ですねぇ」 「受信専用なのが悲しいところです」 「何を誰に向けて発信したいのか皆目見当もつかないというよりつけたくないんですが、まぁそれはさておき……」 沈黙が訪れた。 「続きが気になります」 イルカは次の言葉を待っているようだ。 「話を本題に戻そうと思ったんですが、そもそも俺達意味のある会話をしてましたっけ?」 「グラムいくらで売れるかって話なら勘弁してください。貯蓄する主義なんで」 「いや、そんな話をそもそもした覚えはないんですが。っつーかあんたの腹の肉を誰が買うってんですか」 「物好きがいるかも」 「変なところで正しい評価しましたね」 「案外常識人なので」 「まぁ否定はしませんが、そこにある辞書で【常識】をひいて目を通してください」 「それにしても暑いなぁ」 「聞けよ、人の話」 カカシは言いながら、ある意味これが本題なのかもしれないと思ったそうな。 2006.05.12 |