食べたい物
「イルカ先生、なんか食べたいものあります?」 「おばいけのはしらかし」 沈黙が場を支配した。 「……俺に対する挑戦ですか?」 「いきなりワケの分からん事を言わないでください。俺がいつあんたに白い手袋投げつけましたか」 「そりゃ果たし合いですよ」 「おっと、そうでしたね」 うっかりしてましたと笑うイルカにつられて、カカシも笑った。 「っで、イルカ先生。なにか食べたい物ありますか?」 「おばいけのはしらかし」 笑ったままの顔で、カカシは耳に手をあて、もう一度言うよう促した。 「……そうそう、おばけ」 イルカの言葉に、カカシは近くにあった雑巾を握り締めた。 「一反木綿」 「おばけと妖怪は違いますよ」 「食えー!」 「違うと言っとろうが! っつーか、食えるもんならあんたが食ってみろ!」 「無茶言わんでください」 「無茶を強いようとした人が、そのセリフを吐きますか」 とりあえず雑巾から逃げ延びたイルカは、カカシの肩に手を置いた。 「知らんなら聞けよ」 「痛い痛い。手に力が入ってますよ、イルカ先生」 「そのうち快感に」 「変わんないから手をどけましょうね」 ペシッとイルカの手を叩き、カカシは改めて「それ何です?」と尋ねた。 「鯨」 「最初からそう言えよ」 「からかわれているのかと!」 「思ったのは俺の方だ!」 結局カレーを食べたという。 2006.01.25 |