会話

イルカは一時間ほど巻物を見つめていた。

真剣な表情だったので、カカシは邪魔しないように、部屋の隅で本を読んでいた。

視界の端でイルカがコクリと頷く。そして巻物を床に置いた。

「メモ帳」

「紙の再利用考えてたのか、あんた!」

「やっと決まりました」

何かをやり遂げた男の顔つきで、爽やかに言う。

「一時間も費やすほどの事ですか?」

「トイレットペーパーは気分的に嫌です」

「訊いてねぇよ」

「訊かれてませんよ」

「じゃあ、言わんでください」

「俺は思ったことも口に出してはいけない立場なんですか?」

「人が喋りかけてる時に、話を聞かずに思ったことだけ口にしてると会話にならないでしょうが」

疲れたという気持ちが伝わったかどうかは不明だが、イルカは頷いた。

「メモ紙で良いと思います?」

「言ったそばから無視すんなよ」

「俺が尋ねているのに答えてくれないなんて。本当に会話を放棄しているのは、どっちなんでしょうね」

「あんただよ!」

その叫びは悲しくも無視され、会話らしきものはカカシが巻物に対する答えを言うまで続けられたのだった。


2006.01.14

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