未来
「イルカ先生!」 夜中、隣で寝ていたはずのカカシに叩き起こされ、眉間に皺を寄せながら何事かとイルカは睨む。カカシはガタガタと震えていて、機嫌を窺う余裕すらないようだ。 「お……俺、イルカ先生に捨てられる夢を……」 「つまらん事で起こすなー!」 イルカがカカシの腹に一発入れた。しばらく呻いていたが、やがて復活して抗議する。 「優しく『そんな未来はこないから、安心してください』くらい言ってよ!」 「やかましい! 妄想を口に出して、あまつさえ強要するなんて何事か! 怒鳴ってたら目が冴えてしまったじゃないですか!」 「勝手に怒鳴ったくせに、人のせいにするのは良くないですよ?」 「それじゃあ言い直しましょう。叩き起こされた時点で不快度MAXです」 「だって、怖かったんです」 シュンとなるカカシを見て、イルカは嘆息した。 「カカシ先生……」 優しく添えられた手からイルカの体温がちょっとだけ伝わってくる。 「夢見たくらいでビビッてんじゃねぇですよ」 「空気読んでよ! ってか爪……爪が食い込んでるから!」 「睡眠を邪魔された俺の怒りを思い知るがいいわ!」 カカシは激戦の末、イルカから逃れる事に成功した。 「もっと広い心を持って俺と接してもバチは当たんないと思いますよ」 肩で息をしながらカカシが告げる。 「バチは当たらないでしょうが、神の祝福を受けられるわけでもありませんからね」 こちらも同じように肩で息をしている。 「……運動したら、夢の内容が馬鹿馬鹿しく思えてきました。疲れたから寝ます」 カカシはそう言って布団を被った。 どれくらい時間が経っただろう。イルカは上体を起こしたままカカシを見ていた。 「カカシ先生、寝ちゃいました?」 返事はない。それでもイルカは続ける。 「俺ね、カカシ先生が年食ってハゲても一緒にいますよ」 静かな告白にカカシの体が少しだけ動いた。 「腹が出ても皺だらけになってもね」 「イルカ先生……」 「むしろ面白そうだから見届けたい!」 「雰囲気ぶち壊して楽しいですか!?」 「やかましい! 人の眠りを妨げといて、一人だけ安眠手に入れられると思うなよ!?」 声を荒げたため、一気に目が冴えてしまった二人は、嫌な雰囲気のまま朝を迎えてクマをこさえたそうな。 2005.12.13 |