想像の世界
珍しい事に、イルカとカカシが二人で任務についた。 別段変わったところもなく、任務を終えてもうすぐ里という距離まできていた。 「何もありませんでしたね」 「はぁ」 イルカの言葉に相槌を打つカカシ。嫌な予感がする。 「俺としては『先生危機一髪』みたいな展開を予想していたんですが」 「アホか、あんた」 「ちなみに危機一髪になる先生は俺でなくてもいいんですが。むしろ俺じゃない方が、安全かつスリリングな体験ができて良いとこ取りだなぁと」 「最悪ですね、相変わらず」 「脳内シュミレーションでは、この辺でクナイが飛んできて乱闘」 「……へぇ」 「カカシ先生血まみれ」 「勝手に怪我さすな」 「俺、部外者」 「当事者になろうよ。一応忍なんだし」 「カカシ先生の奮闘で敵が殲滅されるというシナリオなんですが」 「脳内シュミレーションなんだから、イルカ先生がちょっとくらい活躍してもいいと思うんですけど。ってか、想像の中ですら動く気なしかよ」 「息も絶え絶えのカカシ先生の手を取る俺」 何やら話がいい方向に向かい出したと、カカシは次を待つ。 「もうすぐ処理班がくるので、それまで待っていてください。そう言って俺は任務を完了させるために、涙を飲んで里に向かうのでした」 「おぶって帰ってよ!」 「重いから、大人しく処理班待ってくださいよ!」 「処理班って死体処理班だろうが!」 「俺は忍なんです! 一人だろうと里に戻って任務を終えねばならないのです!!」 「言ってる事はもっともですが、敵を殲滅して危険もなくなったというのに、なにゆえ俺は放置されねばならないのでしょうか?」 イルカは面倒くさそうに視線を逸らした。そして急に表情を改めたかと思うと、クナイを握る。 「スリリング到来!」 「道端の蛙相手にクナイ出すな! っつーか、まったくもって話をそらせてませんから!」 「これは毒を持った蛙です!」 「本当ですか!?」 「嘘です!」 「アホか!」 とりあえず、これといった危険もなく任務は終了。 「何ランクの任務だ?」という疑問を残しながら、今日も日が暮れていく。 2005.12.05 |